鍵盤ばばばーん
2009-08-15


「ベートーヴェンです。これは弟子のチェルニーとシレーネ」
「先生のお噂は伺っていますよ。大変にオーケストラをいじめる方だとか。あなたの要求を満たすために演奏家ばかりでなく、楽器職人も泣かされることがあります」
「それはどうも……。御愁傷様……とでも、いうべきかな」
「なんの。先生のような作曲家がいればこそ、楽器も進歩しますです」
                    (森雅裕 「モーツァルトは子守唄を歌わない」より)


 レス・ポールが亡くなった。彼自身のパフォーマンス・ジャンルは決してロックではなかったが、彼が進歩させた楽器の存在がロックに与えた影響は、はかり知れない。

 引き続き、進歩と発明、七転八倒のシロモノ鍵盤楽器の話題。トム・ペティ,2枚目のソロアルバム [Wildflowers] に登場する、鍵盤楽器について。

 まずは、前記事で話題にしたメロトロン。"Only a broken heart" と、"Crawling back to you" に、フルート音で使われている。
 私は"Crowling back to you" のイントロ・ピーヒョロ音は、オーケストラのフルートが適当に吹いたものを、サンプリングしたと思っていた。どうやら、メロトロンで出したらしい。鍵盤のカタカタいう音が入っていないのが、神業に思える。
 「メロトロン・フルート」でピンと来た。こういう事かも知れない。
 トムさん、もしくはマイクは、ビートルズの "Strawberry fields forever" の冒頭音の正体を知りたかった。強記と健忘が同居する男、ジョージ・ハリスンが、そこは懇切丁寧に教えてくれる。ウハウハ言いながらメロトロン・フルートを導入するトムさんとマイク…。
 …と、言うイメージは、さほど突飛ではないかもしれない。

 "Higher place" に登場するのが、オーケストロン。ベンモントが弾いている。音の選択は、ストリングスだろう。
 オーケストロンは、メロトロンによく似た楽器だ。メロトロンが、発音媒体としてテープを使っているのに対して、光ディスクを用いている。これによって、音色の選択が容易,多彩になり、音の持続時間もメロトロンよりも格段に長くなった。ベンモントの演奏を聴けば分かるが、音の歯切れも、メロトロンよりは良い。
 もっとも、オーケストロンはVako社が玩具として作った「オプティガン」を、プロ仕様にしたもので、メロトロンの直接の後継機というわけではなく、別系統と見るべきだろう。
 ともあれ、その特徴はメロトロンによく似て、独特の「へたり具合」が、シンセサイザーの無機質で信号的な肌触りとは一味違う。その特徴がよくわかる映像が、YouTubeに上がっている。




 ベンモントが演奏する楽器の中に、「オルガン」と表記されているものがあるが、これは「ハモンドオルガン」のことなのだろうか?

 一方、「ハーモニウム」とあるのは、「リードオルガン」の通称だ。
 そもそもオルガンというのは、パイプ・オルガンを想像すると分かるが、パイプに空気を送り込んで音を出す楽器。それをもっと簡略化して、鍵盤の先にハーモニカのようにリードを仕込み、足踏み鞴で空気を吹き込み、オルガンに似た音を出すのが、リードオルガンである。昔、日本の小学校の各教室に供えられていた、足踏みオルガンも、その一種と見て間違いない。

 ピアノの表記には、揺れがある。基本的には、Pianoとあるのだが、"You don't know how it feels" では、Grand Piano, Electric Piano と、併記されている。電子ピアノと、アコースティックを併用していることを表すために、わざわざ「グランド・ピアノ」としているのだろう。ただのPianoが、アップライトだとは、考えにくい。

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