Don Giovanni
2012-04-09


ガイ・リッチー監督の映画「シャーロック・ホームズ シャドウ・ゲーム」を見た。ロバート・ダウニー・ジュニアと、ジュード・ロウ主演のこの映画、はっきり言えばアクション映画なのだが、私が好きなホームズというジャンルなので、一応確認している。
 別に「ホームズ」と銘打たなくても良さそうな内容だが、そこはある程度の「枠」があるほうが表現しやすいのだろう。
 音楽に関しては、前作からかなり凝っていて好きだ。特に、アクションシーンにアイリッシュ・ミュージックのダンス・チューンを持って来るセンスが良い。この点に関しては、また別の記事にするかもしれない。
 今回、クラシックではシューベルトの歌曲と、モーツァルトがクローズ・アップされていた。特に、オペラ「ドン・ジョヴァンニ」はオペラ座のシーンもある。実は、私が好きなオペラの一つが、この「ドン・ジョヴァンニ」なのだ。

 映画で使われたのは、「ドン・ジョヴァンニ」第二幕のフィナーレ。
 女ったらしの無法者ドン・ジョヴァンニ(イタリアで640人、ドイツで231人、フランスで100人、トルコで91人、スペインで1003人…!)が、殺した男の石像を冗談で晩餐に誘ったところ、本当に石像がノシノシと屋敷にきてしまう。この石像、ドン・ジョヴァンニに改心を迫る。それを拒否したドン・ジョヴァンニは石像に手を掴まれ、そのまま地獄へ飲み込まれてオペラはフィナーレとなる。
 「ドン・ジョヴァンニ」のジャンルはおおかた明るく楽しい、オペラ・ブッファ(「フィガロの結婚」と同じ)なのだが、この凄まじいフィナーレが強烈で、序曲から作品全体に不吉な死の臭いがまとわりつく。オペラにはいわゆる「悲劇」がたくさんあるが、「ドン・ジョヴァンニ」のフィナーレの重さは格別であり、喜劇的要素との絶妙なコントラストが素晴らしい。
 フィナーレはバージョンによってはドン・ジョヴァンニが地獄に飲み込まれたあと、他の登場人物が現れておめでたい感じで終わるものもあるが、私は地獄に飲み込まれてお終いの方が良いと思っている。
 ここでは、ドン・ジョヴァンニとレポレッロの名コンビ,サミュエル・レイミー&フェルッチョ・フルラネットに、石像はカート・モールの舞台でどうぞ。



 「ドン・ジョヴァンニ」と言えば、もう一曲。第一幕のドンナ・アンナのアリア「Or sai chi l'onore 誰が名誉を奪おうとしたか」。曲の内容は、真夜中の侵入者に父親を殺されたドンナ・アンナが、ドン・ジョヴァンニこそ、その犯人だと知り、恋人のドン・オッターヴィオにそれを告げるというもの。
 高貴で若い未婚の女性という役どころのドンナ・アンナだが、なぜかかなりの迫力をもったベテラン・ソプラノの動画がよく引っかかる。この人だったら、ドン・ジョヴァンニより強いんじゃないかなぁ…とか…。ここは、アンナ・トモワ・シントウで。



 この曲をわざわざ挙げたのは、実はこの曲をもとにしたある曲が大好きだからだ。
 1991年に、NHKで放映された「アインシュタインロマン」という科学ドキュメンタリーシリーズがあった。このメインテーマ曲になったのが、この「ドン・ジョヴァンニ」のアリアを元にしたヴァイオリン・コンチェルトで、ソロはコー・ガブリエル・カメダが弾いていた。
 この曲があまりにも素晴らしかったので、かなり苦労してサントラCDを手に入れた。YouTubeにも上がってないかしらと一生懸命探したのだが、見つからない。あんなに良い曲なのに、もったいない…
 と、思ったらニコ動の方で、妙な使われたかをしていた。とある出版社が「マンガでわかる」と題した科学系の書籍を出しているのだが、その紹介動画。音楽に、私の大好きなアインシュタインロマンのメインテーマが使われていたのだ…!

オーム社 マンガでわかるシリーズの表紙絵


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