Tunnel Vision / Body 115
2012-05-04


ニック・ロウは、1990年発表のアルバム [Party of One](ジム・ケルトナーや、デイヴ・エドモンズも参加)に、"Who was that man?" という曲を収録した。この "that man" とは、まさにキングス・クロス駅の「ボディ115」のことだ。



 曰く、「国じゅうの誰にも知られていないあの男 誰にも愛されず だれも彼のために涙しない … あの男は誰だったんだ?」
 大惨事が題材になっている割には、曲の雰囲気が凄まじく正反対なので、面食らう。その辺りがニック・ロウらしさなのだろうか。

 キングス・クロス駅火災事故と、「ボディ115」に関しては、後日談がある。

 火災から17年後の2004年。「ボディ115」の身元が判明したのだ。ザ・ガーディアン紙の記事はこちら
 「トンネル・ヴィジョン」は2001年の小説なので、身元判明の前ということになる。日本語訳も、身元が判明する前の出版だ。

 「115」の正体は、スコットランド出身,当時72歳のアレクサンダー・ファロンという男性だった。妻に先立たれ、離れて住む四人の娘たちとの連絡も希で、ロンドンではホームレス生活だったが、かといって「誰にも知られていない、誰にも愛されていなかった」というわけではない。
 事故当時、「115」の年齢は「40代から、せいぜい60代」と発表されており、娘たちは自分の父親に該当するとは、まったく想像していなかったのだ。
 長いこと父親との連絡が取れていないことを心配したファロンの娘たちは、1997年ごろから「115」は父だったのではないかと疑い始める。しかし、当時は別に有力な「115候補」が存在しいた。ブライアンの挿話にもこの「候補」が登場する。そして、2004年になってようやく、ファロンが「115」として最有力視されるようになり、検証結果、その身元が判明したのだと言う。
  この「ボディ115」をめぐる話は、2006年に Paul Chambers が [Body 115 : The mystery of the last victim of the King's Cross fire] という本にまとめている。いずれ、この本も読んでみたい。

 暗い挿話の話になってしまったが、とにかく「トンネル・ヴィジョン」は面白い本なので、一読をお勧めする。特に、ロンドンに行く人、行った事がある人、ロンドンに興味がある人、ロンドンに行きたい人、そして東京に限らず、地下鉄が何となく好きな人にもお勧めだ。

 さらにロンドン地下鉄を楽しむなら、2012年1月からBBCが放映した6回シリーズのドキュメンタリー [The Tube] がお勧め。こちらはそのエピソード1。ナレーションを担当しているのは、ザ・マイティ・ブーシュのジュリアン・バラット。

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[Rock 'n' Roll]

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