Tunnel Vision / Body 115
2012-05-04


ロンドンに関する面白い本を探していたら、知人から「トンネル・ヴィジョン Tunnel Vision」という小説を薦められた。
 2001年の小説で、作者はキース・ロウ Keith Lowe。私は英語で読んだのだが、日本語訳(雨海弘美訳 ソニーマガジンズ)も出ている。文庫になっていないのが惜しい。英語も読みやすく、英語学習者にもお勧めだ。

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 ロンドンの地下鉄(通称チューブ tube)オタクのアンディは、パリでの結婚式を前に、鉄オタ仲間のロルフと酔った勢いで、とんでもない賭けをしてしまう。即ち、「一日で(始発〜終電)、ロンドンの地下鉄全267駅を制覇できるか?」(駅名サインを撮影すればクリア扱い。車内からの撮影も可)。「出来ない」と言うロルフが賭けるのは、マニア垂涎のチケットコレクション。そして、「できる」と豪語したアンディは、パリでのウェディングに必要なクレジットカードやパスポート、そしてユーロスターのチケットを賭けてしまう。
 さぁ、アンディは地下鉄マニア夢の「一日で全駅制覇」を達成できるのか?アンディの幸せな結婚の行方は…?!

 ものすごく面白かった。英語となると読書速度が極端に落ちる私でも、どんどん読めてしまう。ストーリー展開がスリリングで、適度にマニアでオタクで、それでいてバカバカしくて笑える。多分、東京などの地下鉄を多少知っていたほうが楽しめる。ロンドンの地下鉄に乗ったことがあればさらに面白いが、乗ったことが無くても、面白いだろう。誰もがいつの間にか、アンディを追って、ロンドンの地下鉄マップを一生懸命に睨みはじめるに違いない。
 今のところ具体的な話は出ていないが、この作品は映画化されるらしい。結末など、やや映画向きに変更されるかも知れないが、私が好きそうな映画になるだろう。

 登場人物はとても少ないのだが、その中で一番魅力的なのは、アンディの旅の道連れとなる、初老のホームレス,ブライアン。いつもビールを飲んで酔いどれているが、なぜかやたらと体力があり、最初は煙たがっていたアンディも、やがてブライアンを頼りにするようになる。
 小説の中盤で、ブライアンはアンディに、ある話をする。1987年に起きた、地下鉄キングス・クロス駅の火災事故の話だ。

 キングス・クロス駅火災事故は、実際に起きた事件で、私もおぼろげに当時のニュースを記憶している。
 1987年11月18日19時30分。投げ捨てられたマッチが火元となり、古い木製エスカレーターなどが燃えて拡大し、31人の死者を出す大惨事となった。私の記憶にも、「木製のエスカレーター」が残っている。後年、初めてロンドンに行ったときにも、一部木製エスカレーターが残っていたのが印象的だった。
 ブライアンが語るには、31人の犠牲者の身元調査の過程で、どうしても一体だけ身元が判明しない男性の焼死体があったと言うのだ。遺体の整理番号から、「ボディ115」と呼ばれる。警察はあらゆる手を尽くしてこの「115」の身元を突き止めようとしたが、どうしても分からない。
 結局、身元不明のまま、この「115」はとある教会墓地の片隅に、葬られることになった ― ブライアンの話はここで終わっている。

 この挿話がとても印象的だった。ググってみたところ、実際、キングス・クロス駅火災事故の犠牲者の中に、身元不明の「ボディ115」があった。ブライアンの話は、実話なのだ。
 当時、この謎の身元不明遺体「ボディ115」はかなり話題になったらしい。警察は行方不明者から該当者を探そうと、大々的に情報を求めたし、法医学者が再現した「115の顔」も、公表されたそうだ。調査はUK外にまで及んだが、結局わからずじまい。


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[Rock 'n' Roll]

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