2012-10-24
CRTこと、 Country -Rockn' Trust については、毎年一月の「ジョージ・ハリスン祭り」に参加している。楽しいトークと、含蓄のある考察、名曲を大音響で聴き、お客さんたちのコメントなども面白い。
今月は、新譜を二つ出したということで、ファンたちが待ちに待った「ジェフ・リン Night」ということになった。ジョージやトムさんがお世話になっていることだし、私も喜び勇んで参加してきた。 出演者は、萩原健太さん、祢屋康さん(レコード・コレクターズ編集部)、ゲストの竹内修さん。
会場は満員。萩原さんは「ジェフ・リン、そんなにキてるの?!」…と、嬉しくも驚いた様子。見たところ、ジョージ祭りと比較して、女子率が格段に低かった。
萩原さんによると、約十年ごとに、「ジェフ・リン、これは来る!(or 来た!)」と思うそうだ。まず、[Armchair Theatre],そしてELOの [Zoom] …いずれも「来る!」と思ったら、意外とそうでもなく、 そして今回の新譜二連発で、今度こそ本当に「来る…のか?!」という段階だそうだ。
アルバムを聞けば、ソングライティングも、プロデューシングもすばらしいジェフ・リン。彼のどんなところがすばらしく、一方でどんなところが「来ない」のかという話になった。
面白かったのは、ジェフのコード使いの話。ディミニッシュと呼ばれる減三和音の上手な多用を、萩原さんがギターを弾きながら解説してくださった。私は音大出身のくせに異常に和声に弱く、ウクレレを習い始めた今も弱い(私が伴奏ではなく、ソロ楽器としてウクレレを習っているせいでもある)。ギターが弾ける人の実演解説は、とても説得力があった。
それから、実は新奇なことを殆どせず、50年代ごろからのルーツの要素を非常にうまく自分のものとして表現できると言うところが、彼が今でもUK では「お茶の間でおなじみの音楽の人」にしているという話。これも納得。
私もコメントに書いたのだが、ロンドンで見たテレビCMに、"Mr. Blue Sky" が使われていて、やはりELOは大人気なのだなと実感したものだ。これは、British Gas というプール(そう、プール。なぜ gas なのかはよく分からない)のCM。
一方、なぜ「来ない」のか ― つまり、なぜ世界的なヒットや、ツアーの成功に繋がらないのかという話になる。
無論、ウィルベリーズや、TP(&HB)、しまいにはビートルズまでプロデュースしたその仕事に関しては、言うまでもなく大成功しているのだが、ジェフ・リン個人としては、意外と盛り上がりきれないという点を、「来ない」と指しているのであって、彼の仕事の良さとは、また別問題。
まず、ウィルベリーズ以降、トムさんとの仕事などは特に、シンセサイザーなどより、生の音をダイレクトに響かせる手法でずっと来ているため、70年代のいわゆる 「ELOらしい音」を愛しているファンにとっては、盛り上がりきれないという説。なるほど、私はシンセサイザーが苦手なのでこのグループではないが、昔からのファンとしては有り得ること。理解できる。
ライブについては、萩原さんの「ライブは、ただ上手いだけじゃ駄目なんだ、グルーヴが必要なんだ」というコメントが印象的だった。
その代表として、Zoomのツアーの "Telephone Line" の映像を見た。確かにとても上手い演奏だが、その前にみんなで見たCFGでの "Handle with care" 比較すると、まったく熱気の点で劣り、とても物足りない。
ともあれ、今回の新譜は特に [Long Wave] の評価が高い。ロイ・オービソンのカバーである "Running Scared" は、あのドラマチックな展開で盛り上がりっぱなしでババーン!と終わってしまう。 その終わりの瞬間が、萩原さんにとっては、
「右京さん!」
…という感じだそうだ。そうなんだ。亀ちゃんなんだ。ソン君とか、カイト君じゃなくて。
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