傑作ができる時
2015-06-17


2010年代に入ると、毎年が1960年代ロック黄金期から、ちょうど50周年になる。ビートルズのデビュー、ストーンズのデビュー、ビートルズがアメリカ上陸、あのアルバム、このアルバム、みんな50周年。
 今年は2015年なので、ボブ・ディランの名作アルバム [Highway 61 Revisited] の発表から50周年。そして、6月15日と16日にレコーディングされたのが "Like a Rolling Stone" で、世紀の名曲が誕生してから50周年ということになる。

 [The Bootleg Series Volume 1-3] に収録されたバージョンでも分かるとおり、最初この "Like a Rolling Stone" は四分の三拍子、ワルツだった。
 ニューヨークのコロンビア・スタジオで6月15日に録音した時は、このワルツ・バージョンで、ピアノを弾きながら歌っていたディランが「喉がつまっちゃった。もう一回やる?」と言い、短い録音で終わっている。私はこのワルツバージョンも結構好き。もちろん、四拍子のロックなあの曲ありきで好きなのだが。

 翌6月16日には、マイク・ブルームフィールドのほかにも、アル・クーパーも録音に加わった。クーパーは当初見学者のつもりだったようだが、結局録音に参加することになり、あの印象的なオルガンを弾いている。プロデューサーはオルガンの音を小さくミックスしようとしたが、ディランが押し出すように主張した。これは完全にディランの天才性の勝利だろう。

 "Like a Rolling Stone" は大ヒット・シングルとなり、12週連続チャート入り、最高位2位を記録した。ちなみに、1位はビートルズの "Help!"。
  これは映画 [No Direction Home] に収録された、有名なイングランドでのコンサートの一コマ。「ロイヤル・アルバート・ホール」と俗に言われているコンサートだ。痩せっぽちの、どこかこの世のものではないような、若きディランの絶唱。



 この曲がロック史上もっとも偉大な楽曲と評されているのは有名な話だし、私もそう思う。その私が、この曲と肩を並べる名曲だと思っているのは、ジョージの "Isn't It a Pity" と、TP&HBの "American Girl"。
 ところで、急に話は変わるが、"American Girl" がまたカバーされているという。今度は、カナダのバンド The Wooden Sky。

 

 ええと…これは…たぶん、最高。ヴォーカルの歌い方と容姿以外は。特に歌い方が…ダメだ…。こういう歌い方の人なんだろうなぁ…
 ギターを中心とした演奏は原曲に対するリスペクトがほとんど全て。ギタリストのバックコーラスはとても良い。やはり、メインのヴォーカルって大事だ。楽曲の8割は支配してしまう。
 まぁ、名曲をカバーすると、それなりに難もあるもので。この曲とTP&HBが大好きだということはよくわかった。

 カバーしたくなる名曲が存在する、それが誕生した瞬間がある。傑作ができるとき、マイク・キャンベルは "American Girl" を録音したとき、確かに「これだ、これが自分たちの音楽だ」と確信したという。"Like a Rolling Stone" を作り上げたディランにも、同じように何かつかむものがあったことだろう。
[TP&HB]
[ウィルベリー兄弟]
[Rock 'n' Roll]

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