ボブ・ディランの [The Real Royal Albert Hall 1966 Concert] と、ザ・ローリング・ストーンズの [Blue & Lonesome] の発売日が同じだったため、徒党を組んでやって来た。
ディラン様にストーンズなんて、最強タッグ。一方は過去のライブ音源、一方はトラディショナルのカバーアルバムだったから対処できるが、両方ともオリジナル楽曲新譜だったら、神経がついていかない。
思えば、60年代はそういう最強クラスの怒涛が押し寄せていたわけだ。ビートルズは毎年アルバムを発表していたし、初期は年に2枚だった。
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まずは、ストーンズの [Blue & Lonesome] から。
ストーンズの好きなところの一つが、彼らのオリジナル楽曲の出来の良さなので、そういうメリットのないこのカバー楽曲のみのアルバムはどうなのかと思っていた。しかし、これはこれでストーンズらしい格好良さがある。
ありがちなのが、ロックスターしてではなく、「ブルースマン」として「渋い」演出に走ることだが、ストーンズはそういう逃げは打たない。敬愛するブルースに対するリスペクトはあるけれど、演奏するのは飽くまでもUK出身,ロックバンドのストーンズなのだという強烈な自負がある。
言うなれば、彼らがデビューしたころにブルースを演奏していたのと、スタンスが変わらないように聞こえて、それがロックファンとして嬉しい。
ビデオも、「渋く」は作らずにイメージするストーンズのとおりで良い。
ミックの踊りって大事なんだと初めて実感する。あれがなかったら、「渋い」演出に逃げかねない。毎度のことながら、チャーリーの上品な背筋の伸び方が最高。
ゲスト・プレイヤーとしては、エリック・クラプトンが2曲に参加している。べつに彼ではなくても良いような演奏で存在感はイマイチ。もっともクラプトンが存在感を発揮すると、いろいろ困るのだが。
クラプトンは「偶然、隣りのスタジオで録音していたので、飛び入り参加した」ということになっているが…それを頭からすっかり信じるほど、純粋でもない。
それよりも、"Hoo Doo Blues" に参加している、ジム・ケルトナーの方が嬉しい。パーカッションというから、あの印象的なクラベスの音だろう。きっと「世界一高いクラベス」に違いない。
ブルースのカバーだけど、ストーンズ。ストーンズだけどブルースのカバ−。こういうアプローチも、良いだろう。ただ、これを続けて欲しくはない。2年以内に、オリジナル楽曲の新譜を絶対に出して欲しい。ストーンズには、ストーンズでいて欲しいのだ。
ボブ・ディランの [The Real Royal Albert Hall 1966 Concert] 。ブートレグ・シリーズの [The "Royal Albert Hall" Concert] が、実は5月17日のマンチェスターであり、誤解として「ロイヤル・アルバート・ホール」が定着しているのに対し、「本当の」ロンドン,ロイヤル・アルバート・ホールで、5月26日に行われたコンサートを収録したものだ。
これほど綺麗にのこっているのに、今まで公式にならなかったのが不思議だが、それほどまでにマンチェスターでの、「事件」が強烈だったのだろう。
「事件」はともかくとして、こちらの「本当のRAH」は、演奏の出来が良くなっている。マンチェスターから9日後だから、本番という名の練習も、リハーサルも重ねているので、上手いのは当然。私はこういう上手さが好きだ。
まず、印象的な前半のアコースティック・パート。水を打ったような静けさのRAHが目に浮かぶ。そこにディランがひとり、闇を突き抜けるように歌い上げる [Desolation Row] がもっとも鬼気迫る。
"Mr. Tambourine Man" のコーダがやけに長く感じる。後半のエレキ・パートへの気後れのようにも聞こえる。
しかし、後半も落ち着いているし、大した騒ぎもない。ヤジも少しはあるようだが、ディランはだいたい機嫌が良いように思えた。
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