Untitled
2017-10-06


いつか、こんな日が来るとは分かっていた。
 でも、こんなに早く来るとは、思わなかったんだ。

 このブログを始めて9年余り。まさか、トム・ペティの死を報じ、記事を書くことになるとは思いもしなかった。一体、何をどう書けば良いのかも分からない。いかに音楽が素晴らしいか、語りたくても、どこから手を付けて良いのやら。
 火曜日の朝に衝撃的な知らせが入り、確認に追われ、昼過ぎに彼の死を知る。一瞬、胸がつぶれそうになる。トム・ペティが、死ぬなんて。
 仲間と連絡を取り、数人と会う。間違いない、トム・ペティは死んだんだ。

 ずっと彼の音楽を聴いているが、不思議と涙も出てこない。ただ良い音楽を聴いているという快感だけで、トム・ペティの死という悲劇に、感情の発露がついていかない。
 直接の知り合いでもない、ただ遠くから見つめているファンに過ぎないからだろう。実感がわかないのだ。三日経ってもわかない。山のような記事や追悼コメントを読んでも、まだわかない。
 ヘッドフォンをつけて、プレイをオンにすれば、トムさんの音楽が聞くことが出来る。あの格好良い姿も、いつものとおりディスプレイや紙で見ることが出来る。

 トム・ペティを思う涙は、いつあふれ出るのだろうか。

 たぶん、残されたハートブレイカーズ ― とりわけ、マイク・キャンベルの姿を見るとか、コメントを読むとかした時だと思う。トムのいない世界に、生きているマイク ― ああ、トムさん、何てことをしたんだ。こんなに突然、いなくなってしまうなんて!
 20歳ごろから45年、トム・ペティのロックンロール・ミュージシャンとしてのキャリアにおいて、マイク・キャンベルは、ほんの僅かな例外を除いて、ほぼ片時も離れなかった。
 つい先週まで、いつものように一緒に仕事をして、最高の音楽を奏でていた。しめくくりの挨拶をするトムさんを守るように、いつもマイクは彼の後ろからステージを降りてゆく。前を歩いているはずの、前でギターを持って、最高の歌を聴かせるはずの、輝くばかりの作曲家,詩人,ロックンローラー,バンドメイト ― そして親友との、永遠の別れを迎えてしまった。

 幸運なことに、私には録音も映像もある。トムさんはずっと生き続け、歌い続けてくれる。
 たしかに、新曲が聴けない、もうライブを見に行くことは出来ない。寂しい。それは残念で悲しいことだけど、これまで40年以上、彼はありとあらゆることをしてくれた。あらん限りの力で、最高の音楽を大量に残してくれた。
 彼が静かに、安らぐ時が来てしまったのだ。あれだけの事をした人を、引き留めることも、唐突な別れに怒ることもできない。
 とにかく、トム・ペティはもういない。「いない」という、悲しみを実感させるもの,きっと私を号泣させるもの ― 残されたハートブレイカーズ ― 彼らの悲しみと心の傷が、少しでも癒えることを願っている。私は彼らのファンだから。

 たくさんの追悼コメントの中で、今のところ一番胸に迫ったのは、ダニー・ハリスンのものだ。

Thank you dear Tommy for always being there for me. You got me through some of the hardest moments of my life. See you on the other side. I love you, bless.
 ありがとう、大好きなトミー。いつもそばにいてくれて。あなたがいたから、どんなにつらいときも、ぼくは乗り越えることが出来た。また別の世界で会いましょう。愛してる、神のご加護を。

 音楽というトムさんの職業や、業績ではなく、個人的な関係としてのメッセージ。ジョージも "Tommy" と呼んでいた。
 でも、このダニーの言葉は、私たちファンにもあてはまる。
 ありがとう、そばにいてくれて。そしてこれからも、そばにいてくれるトムさん。あなたがいたから、今までも、これからも、乗り越えてゆける。そう、あなたの死さえも。

 ふとジョージが手をさしのべると、トムさんがその手を取った。

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[TP&HB]

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