塩野七生 特別講演会
2018-11-26


ホテルオークラ東京と文藝春秋の公演企画、塩野七生の特別講演を見に行った。

 以前、好きな作家を三者挙げたことがあるが、そのとき塩野七生を入れていたと思う。普段、作家の講演会など行かないのだが、今回はたまたま人がこの講演会の4200円という料金が高いのか、安いのかという話を耳にしたため、ちょっと行ってみるかと思った次第。
 開演前にはティータイムと称して、お茶とお菓子が振る舞われた。おいしい。

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 テーマは「十七歳からの夢を達成して」とのことだったので、青春時代に地中海世界の歴史に憧れ、八十一歳となった今、「ギリシア人の物語」を書き終わったことに関して自身を語るのかと思ったら、そうでもなかった。
 事前に「質問」を募集しており、それに答える形で講演をすすめたのだ。
 本人曰く、講演は得意ではないとのこと。たしかに、講演の名手という感じはしなかったが、話自体は面白かった。
 私は彼女の作品が好きではあるが、深い「質問」をするほどのマニアではないので、何も出していない。ちょっと出せばよかったかなと思う。

 「現代は英雄が育っていないと思いますが?」という質問に対し、「育っていないのではなく、育てていないのだ。それは人は平等だという原則があり、突出した才能を認めないからだ」との答え。なるほど。
 「傑出した才能というものはある」と断言する塩野七生。これには大いに同意する。どうにもならない、「人は平等だ」という概念からは逸脱する「才能」はある。そういうものがあるからこそ、それに接した「凡人」は、時に感動し、心を動かされるのだ。

 「いい男はみんな書き尽くした」という塩野七生。
 駄作が無いとも言えない。ちょっとしたミステリーっぽいシリーズは失敗だったと思う。
 私が好きなのは、「海の都の物語」と、「ローマ人の物語Uハンニバル戦記」。
 「ギリシア人の物語」も相変わらず面白く、分かり易かったが、やや筆がいい加減になり、似たような表現が続いたのは残念だった。
 ともあれ、歴史の面白さをうまく伝えてくれる貴重な存在。これで終わりなどとは言わず、まだ歴史エッセイを書いて欲しい。
[歴史]

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