2024-07-08
実は当初、[Petty Country] を買うつもりはなかったのだ。
トム・ペティのトリビュート・アルバムとなれば買って当然のはずだが、それがカントリー・ミュージシャンによるものだというところが問題だった。私はカントリーが苦手なのだ。
ロックのルーツを探って色々な音楽を聞いていた時期、ブルースやゴスペルはとても好きだし、苦手なジャズでさえ、そのルーツの一つであるラグタイムなんかは聴くのも弾くのも好きだったりする。しかし、カントリーだけはその能天気過ぎる雰囲気がだめだった。自分でピアノを弾く場合もそうだが、音楽には――たとえ明るい音楽でも ―― 鬱情が必要だと思っているのだ。
軽すぎ、明るすぎ、ダサいファッションに貼り付けたような笑顔、カントリーのそういう雰囲気じが苦手なため、更に上流へ遡り、アイリッシュ・ミュージックに落ち着いたという経緯がある。
まぁ、そういう訳でカントリー界の大物が揃って参加するという触れ込みの、その名も [Petty Country] ―― うーん、どうなんだと思うのは当然だった。
ただ結局買う気になったのは、マイク・キャンベルとベンモント・テンチが参加していることと、スティーヴ・アールも参加していることだった。スティーヴ・アールは、私の中でカントリーカテゴリーには存在しておらず、私が聴く音楽の人だからだ。
アルバム全体的には、冒険的なアレンジがほとんどなかったのが面白かった。純粋にトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのファンで、オリジナルの良さを再現しようとする姿勢がそうさせたのだろう。このことは、私にとっては嬉しかった。聴いてて気持ちの良い素敵なアルバムだ。
世の中には、「ビートルズをクラシック風に」みたいなシロモノがあるが、心底退屈だと思う。
特に良かったものを2曲。
まず Dierks Bentley (読み方がわからないくらい、まったく知らない)による、"American Girl"。フィドル、マンドリン、バンジョーなどの、カントリー要素こそ取り入れているが、トム・ペティ・モデルのリッケンバッカーにレスポールのサウンド。ほとんどオリジナルに忠実で、トムさんへの愛情が非常に良く伝わってくる。
お次は、マーゴ・プライス ――こちらも全く知らない ―― による、"Ways To Be Wicked" これまた原曲に忠実な騒々しさで好印象。なんといっても、マイク・キャンベルが参加…参加どころか、バックコーラス(!)を務め、ギターを弾きまくる。ああ、活き活きしているなぁ。
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