2026-03-06
2019年のドキュメンタリー映画、[David Crosby: Remember My Name] を見た。制作の一人は、おなじみのキャメロン・クロウである。
ソロアルバムの制作や、ツアーに勤しむ78歳くらいのクロスビー。愛する家族と過ごす素敵な家で、上機嫌にインタビューに答えている。
曰く、冴えない太った少年だったクロスビーは、ギターを手に入れて歌い始めると俄然その存在が輝き始める。映画全体を通じてもっとも印象的だったのは、クロスビーの力強く、つややかで、唯一無二の、その歌声である。
彼は1941年生まれ、時代が時代である。またたく間にバーズという伝説のバンドの一員となり、その才能を発揮した ー と思ったらクビになった。その間、数枚のアルバムは発売しているのだが、人生の長さからすればあっという間かもしれない。ある日、バーズのメンバー2人がポルシェでクロスビーの家に乗り付けて、クビを宣告するところなどは、アニメーションを使っている。
面白かったのは、クロスビーがバーズをクビになった後、船を買って海に出るという彼の独自の生き方だ。60年代ロックンローラーのなかでそういうタイプはあまりいない。
やがてグレアム・ナッシュと運命の出会いをするのだが、彼のことを「どこの誰かも知らなかった」とのこと。そこにスティーヴン・スティルスも加わって、CS&N の結成である。若い頃のスティルスという人は、モンキーズ候補になっただけあって、歯並びと頭髪に問題がある以外はなかなかの美男子だ。
レコーディングの合間、バルコニーでなにやら言い合うクロスビーとナッシュ。言い合いなのだが、その2人の声がまた良い声なのが面白かった。ナッシュの声が高い…!
クロスビーと女性たちとの関係も語られている。特にジョニ・ミッチェルに関しては興味深かった。それにしても、早々にバーズをクビになるし、CS&Nもナッシュの人格で保たれていることは誰でも知っていそうだが、そこにジョニ・ミッチェルとは劇薬混ぜるな危険という感じだ。
ある時の恋人が若くして事故で亡くなったとき、深く悲しむクロスビーを、仲間たちが献身的に支えたという話が泣かせる。音楽的才能が豊かでありながら、人間性に多少問題のあるクロスビー。でも、友人たちにとっては放っておけない存在だったのだろう。
ウッドストックに限らず、60年代末から70年代のライブシーンが素晴らしかった。CS&N (もしくは CSN&Y)というと、美しいハーモニーが特徴だが、ライブでの熱さ、パワフルさも決して引けを取るものではなかったようだ。CS&Nのアルバムは何枚か持っているが、ライブ・アルバムは持っていない。何か良いものがあったら買ってみようと思う。
60年代から蓄積していった薬物の問題は、クロスビーの命こそ奪わなかったものの(不思議なことに)、人生を破滅させようとしていた。とうとう1985年に逮捕、収監された。刑務所で完全に薬物と縁が切れたかどうかは知れないが(あまり信じていない)、クロスビーは社会復帰し、また仲間と音楽活動を始める。
普通なら、90年代を経て21世紀も、歳を取りながら円熟した演奏を聴かせ続ける ― と思ったら、その後に波乱があるのがクロスビーのある意味すごいところである。
私も見た2015年の来日公演後、北欧でのCS&Nのツアーで、長年クロスビーを許し、守ってきたナッシュが耐えきれなくなり、完全な決裂となったのだ。しかもステージ上で。原因はたぶん自分にあるのだろうというクロスビー。
以降、彼はかつての仲間から完全に孤立してしまっているという。ナッシュも、ロジャー・マッグインも、スティルスも、ヤングも。彼らの連絡先も知らないし、また一緒になにかやる見込みはまったくないという。
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