6月7日付けで
Cool Dry Placeに、「カントム」から[howie]の翻訳をアップした。
この章に関しては、いつ翻訳するべきなのか、ちょっとした課題になっていた。訳すのは辛いに決まっている。だからと言って後回しにすると、完訳を前にしてやる気が萎えたり、悲しい気持ちで終わってしまったりする。それは嫌なので、早い内にやってしまおうと思っていた。
ちょうど、前回のアップでハウイのバンド加入時の話題になり、彼の素晴らしさと未だに懐かしむ気持ちが語られたので、その流れで、翻訳する気になった。
奇妙な事と言うべきか、当然と言うべきか。とにかく火事やノロケ話よりはよほど気持ち良く ― 変な表現だが ― 翻訳できた。話としてはとてつもなく悲しいのだが、ハウイに対する愛情がトムにも、話に出てくるどの人にも、そして私にもあるせいだろう。当然、「カントム」の中で一番泣いた箇所ではある(一番笑った箇所は、トムさんのパパがヘビやワニと戦ったところ)。
さすがに、80年代からスタジオにはヘロインがあって、ハウイ以外も多少試したという箇所はぞっとした。笑って済む話ではない。ただし、一応認めるトムの態度には敬意を持つ。
ハウイの問題にもっと早く気づかなかったのか、もっと早く積極的な対処をするべきだったのではないか、自分たちでどうにかするのではなく、早くスペシャリストである他者に任せるべきだったのではないか ― 今となっては、いくらでも後悔も批判もできる。それが真実かもしれないが、かと言ってバンドも周囲もいい加減だったわけではない。
トムは特に、音楽以外の問題にもまともに対処する能力がかなりあると思う。本当に音楽以外の事が出来ない人も居て、「芸術家だから仕方がない」などと言われるが、私はあまり褒められたものではないと思っている。芸術家とはいえ、社会人には変わりない。
それはともかく― 誰もがハウイの為に最善を尽くしたであろうし、それ故に悲しい結末が、やるせない。
マイクもトムも、仕事以外ではバンドメンバー同士の付き合いはあまり無いと言う。それが長く互いを好きでいられる秘訣とのこと。トムとマイクに関して言えば、仕事に使っている一生涯の時間の長さや、その人間関係を思えば、それで十分なのだろう。
しかし、ハウイに関しては「仕事の時以外は知らない」という、心地良い関係が仇になった。ベストな関係であり、それでも結果は悲劇につながる。つまるところ、ハウイの問題はハウイの問題以外の何物でもなく、彼自身にしか解決する力は備わり得なかったのだろう。
私が読んでいて一番悲しく、同時に ― 奇妙なことに ― かなり好きな場面は、ロックの殿堂入りセレモニーのために、スタンと久しぶりに会うところ。
けんか別れして10年ほど、色々あったけど再会してリハをしてみると、とても良い雰囲気。ところが翌日、ハウイの変貌ぶりを見たスタンが、またトムと言い合ってしまう ―。
スタンも、トムも、同じ質量でハウイを愛しているからこその言い合い。どちらも悪くはないし、それを互いに分かっている。二人ともハウイを深く愛していることを、分かっている。ふと、ジョージの "Isn't it a pity" という名曲は、こういうシチュエーションを歌っているのではないかと思ったりする。
さらに、映画[Runnin' down a dream] で言葉に詰まってしまうベンモントや、寂しげに「出来ることは何でもした」と語るマイクを思い浮かべると、たまらない気持ちになる。
私個人にとってのハウイ。
私が最初にTP&HBを知った時から、彼はTP&HBそのものだった。私にとってのFirst TP&HBは "So you want to be a rock 'n' roll star" の映像なのだが、ホーン部隊やコーラス部隊はこのバンドの一員ではなく、間違いなくあのベーシストを含めた5人こそが「あのバンド」だと分かっていた。
セコメントをする