Just One Night
2011-06-22


ある程度のアルバム作品数のあるアーチストを選び、そのアルバムを順番はランダムに、全て通して聴くというiPod再生方法を続けている。
 最近、エリック・クラプトン(「エリック・クラプトン」名義のみ)のターンに当たったのだが、すこぶる奇妙な感じがした。彼ほど、最近私の評価が低いアーチストも居ない。しかし、いざ彼のアルバムを一通り聴いてみると、まさに珠玉の名作ばかりで、文句のつけようのない最高のロックンローラ―なのだ。
 からくりは馬鹿馬鹿しいほど簡単だ。私がクラプトンのアルバムでiPodに入れているのは、[From the Cradle] までで、それ以降のアルバムを聴いていないのである。私が聴くに値すると思っているのは、1994年までということ。この期間に限定すると、この上ない偉大なロックンローラーという評価になる。
 私がある程度好きでありつつ、キャリアの中でこれほど評価に差が生じるアーチストも珍しい。強いて言えば、ジョン・レノンが同様か。

 とりわけ、70年代のアルバムはどれも傑作揃いだ。80年代になると、それなりの時代背景もあって70年代ほどの評価は出来ないが、それでもあの時代としてはよくぞやったものだと思っている。
 クラプトンと言えば、プライベートなり、音楽活動なり、エピソードの多い人物だが、それらの雑音はどうでも良い気がする。それこそ、彼がジョージの大親友でなかったら、本気で人となりには興味が沸かなかっただろう。
 とにかく70年代だ。実のところ、クラプトンはロックレジェンドの中にあっては、作曲能力が豊富な方では無いかも知れない。87年代以降は、その能力が枯渇したというのが私の評価だ。しかし、誰かとの共作にしろ、人のカバーにしろ、70年代のクラプトンが演奏すると、それらのほとんどが凄まじいほどのオリジナリティをもって訴えてくるのだ。
 無論、私に豊富ではないなどと言われつつも、オリジナル楽曲も粒ぞろいだ。私がクラプトンの作曲作品としてとりわけ好きなのは、"Bell Bottom Blues" と、"Tell Me That You Love Me" 。前者はその圧倒的な熱量と絶望的なロック精神。後者は限りなく優しく端正な佇まい。

 では、70年代クラプトンの最高傑作アルバムは何かと言うと、これは判断が難しい。一般的には "461" が高い評価を受けているのだと思うし、それが妥当だろう。ただ、私の思い入れはまず [Slowhand]。学生時代、私のロック師匠(同級生)が「最初に聴くべきクラプトン」として勧めたという経緯がある。それから、ソロ1作目[Eric Clapton] もスワンプサウンドと、楽曲の出来の良さで一歩抜き出ている。

しかし、あえて一作品だけ好きな物を決めなければならないとなったら、[Just One Night] にしよう。

[画像]

 ライブアルバムを挙げるのは卑怯だが、これしかない。"Layla" もなければ "Crossroad" もないアルバムだが、このライブの格好良さは圧倒的だ。
 比較にして悪いが、[24 Nights] はあまり好きでは無い。これの映像は早々に処分してしまい、手元に無い。我らがスティーヴ・フェローニが参加しているのだから、好きなライブに挙げたいところだが、サイド・ギタリストの拙さと、サウンドのだらけ具合がどうも気に入らない。雰囲気も好きじゃないし、着ている服さえ気に入らない。
 一方、[Just One Night] は、ジャケットからして最高に格好良い。そしてサイド・ギタリスト,アルバート・リーが素晴らしい。手堅く、調和が取れて、曲ごとにどう演奏するべきかをわきまえた心地よさが、まさにバンド・ワーク。私の最近のクラプトン低評価は、残念ながらこのバンドワークの悪さにその一端がある。
 楽曲も良い物ばかりだし、元々それほど好きな曲でもない "Wonderful Tonight" すら、このアルバムの演奏はいやらしさや、もったいつけた感じが無くて好きだ。他にお気に入りなのは、冒頭の威勢の良い "Tulsa Time",ソロ1作目の "After Midnight", "Blues Power" など。有名なあの "Cocaine" は言うに及ばず。


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[Rock 'n' Roll]

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