Conversations with Tom Petty
2011-11-06


昨日11月5日付けで、Cool Dry Placeに、「カントム」こと、[Conversations with Tom Petty] のチャプター2,[anything that's rock 'n' roll] のアヤシゲ翻訳をアップした。原本が発表された2005年から数えて、6年目の完訳となった。さすがに、大仕事を一つ終えたような気がする。

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 そもそも、ハードカバーで302ページ、薄くもないこの本を翻訳する気になったきっかけというのは、他愛もなかった。文中に、やたらとジョージ・ハリスンが登場するのだ。どうやら、マイク・キャンベルの次に頻繁に登場するのがジョージらしい。
 ジョージ・ファンに、「トム・ペティが語るジョージ」を教えてあげたくて、ウィルベリーズの下りあたりから翻訳を始めた。巻末の索引を頼りにジョージが登場するところを翻訳しているうちに、ジョージを追うだけでもこの本のかなりの割合をカバーすることに気付いた。
 だったら、ついでに全文翻訳だってしても良いのではないかと思い始めたのは、3年ほど前だろうか。特に一昨年、ポメラを購入して通勤時間で翻訳を始めてからはかなりはかどった。「カントム」翻訳に貢献してくれたのは、電子辞書とインターネット検索、そしてポメラだ。
 以来、順調に翻訳を進めてきたが、今年3月、あの震災が起きた。あれ以来、生活パターンが少し変わり、通勤翻訳をやめたため、最後の最後に来て翻訳スピードが落ちた。それでも残すはチャプターにして三つほどだったため、完訳にこぎつけた。
 私の翻訳文を楽しみしてくださっている方々から、感想や感謝のお言葉などをいただき、本当に励みになった。この場でお礼を申し上げたい。

 翻訳を通じて感じ続けてきたのは、トム・ペティという人がとにかく頭の良い人だということだ。この人は、物事を説明する能力が非常に高く、要するに話すのが上手い。これらの能力は、誰でも当たり前に出来そうで、本当の実力を持つ人は少数である。
 トムは決して難しい言葉や、技巧を尽くした表現をする人ではないが、物事を説明する前にきちんと頭の中で順序立て、人に分かり易く伝えるのに最善の方法を見いだしてから、口を開いている。翻訳する方としては、ありがたい人だと思う。
 ポール・ゾロという「著者」が居る以上、トムの言葉をきちんと整理していることは分かるが、映画[Runnin' Down a Dream] で話していたトムの口調は、「カントム」とほぼ同じで、ゾロによる「編集」はそれほど必要なかったのではないだろうか。

 もう一つ、感じたのは、トム・ペティの記憶力の良さである。彼は話す内容にほぼズレがない。この人は何でもかんでも雑多に覚えているのではなく、物事に関して、その一番ポイントになるとことを、的確に覚えている。「カントム」の内容は膨大と言って間違いないが、つじつまが合わなかったり、情報に齟齬があったりという点はほとんど無かった。
 一方、博覧強記なファンの方が、よほど知識があって、トムの記憶違いや作り話を指摘をしたりするのかも知れない。ボブ・ディランのクロニクルのように、文学性の高い作品だと、そういう面もおおいにあるだろう。しかし、少なくとも私は、この「カントム」に関してそういう指摘をいちいちする気が起きない。
 トム・ペティはクレバーで、物覚えが良く、しかも大事なことは忘れない。基本的に現実認識力があり、冷静。だからこそ、バンドを長年にわたって引っ張り続け、レコード会社を相手に闘い、世間に対してモノを申すこともできたのだろう。それでいて、ロッカーとして大事な情熱、反骨心、愛情、友情を豊富に持っている。そういう愛すべきトム・ペティを感じ続ける、6年間だった。

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[TP&HB]

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