Keyboard誌にベンモント・テンチのインタビューが載り、ネット上で読めるようになっている。このインタビューは、ハートブレイカーズの新譜ではなく、ベンモント自身のソロアルバム [You should be so lucky] についてのもの。
私は「機材」には興味は無いが、「楽器」には興味があるので、そういう意味でも面白い内容だった。
Benmont Tench talks about his first ever solo album
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なんでも、このインタビューを行った場所は、ニューヨークのスタインウェイ・ホールとのこと。
このニューヨークのスタインウェイには、私も行ったことがある。ホールにこそ入らなかったが、ピアノのショールームはまさにピアノ・ワンダーランドで、一番高そうなピアノで平均律を弾いてきた。
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このインタビュー、時おり日本語が登場する。インタビュアーによると、[You should be so lucky] の "Today I Took Your Picture Down" では、"Zen-like" なピアノコードが鳴っているそうだ。禅がなんたるか、私には皆目わからないが。
"Blonde Girl, Blue Dress" は、Haiku 俳句っぽいそうだ。ベンモントは、ハイクとは褒めすぎだが、トム・ペティの「最小限の言葉でこそ、最高にエモーショナルなインパクトが生まれる」とう言葉を参考にしているとのこと。
"Wobbles" では、プロフェサー・ロングヘアの影響が聞き取れるという。ニュー・オーリンズの音楽の影響について、ベンモントはこう答えている。
ぼくはあそこ(ニュー・オーリンズ)の大学に2年間いた。(中略)ニュー・オーリンズに行くなり、すぐにプロフェッサー・ロングヘアやザ・メーターズに衝撃を受けたよ。それ以来、ずっとニュー・オーリンズの音楽を聞いている。
ピアノの種類に関する質問については、こう答えている。
このアルバムには、幾つかの異なったサウンドのピアノを使用している。ギター・プレイヤーはスタジオに来ると、「この曲では1957年のレスポールを使って、次のでは、2000年のストラトキャスターを使おう」とか言うだろ。ピアニストは、そのスタジオにあるピアノを良い楽器だろうが、悪い楽器だろうが、使わなければならない。それに、アルバム全体で、たった一つのピアノのサウンドに限定されてしまう。
それでグリン(プロデューサー)とぼくはこう考えたんだ。「家からアップライトを持ってこよう。使いやすいから。」木目調のヤマハU7。実はかなり調子が悪くなってしまって、セッションの後、オーバーホールしなくちゃならなかった。参ったよ。
(グランドピアノは)サンセットサウンドのスタジオ3にあった、スタインウェイB。
(アップライトとグランドは)たぶん、違いがある。タッチも違うし、音色的にも違う。ぼくはヤマハU7の、ハンマーと弦の間にフェルトを挟んで、音を小さくするミュート機能が、大のお気に入りなんだ。とても静かに演奏できるからね。グランドピアノの時も、ほとんどの場合ソフトペダルを使っている。
このコメントは非常に興味深い。
まず、ヤマハのU7だが、このシリーズは1964年から1974年まで生産されたアップライトピアノ。この頃は、まだ象牙の鍵盤があっただろう。この60年代から70年代にかけて、ヤマハやカワイが大量生産した一般家庭向けのアップライトピアノというのは、名器が多い。それこそ今でも、平成生まれの新しいものより、ずっと良い音がするのだ。
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